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千泡沫庭園

幾つもの泡沫から為る、どこか懐かしい庭園へ。

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ぷろふぃーる

さいしんきじ

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夢の影-2.6 


靄がかった道を行く。
ラックは確実に足を進めていく。前方を歩いているヨタと、その手に握られたレヴリーを追いながら。彼らは先から、殆ど喋らなくなってしまった。といっても、喋らないのはヨタの方であって、時々ぶつぶつ呟いているレヴリーが、羽をぱたぱたさせているのが見える。それに思わず噴いてしまうも、ラックはしっかり歩みを進める。


『ヨター。ロンに敵ワナかっタかラって、ソンナに落ち込むコトは』


小さく呟いたその言葉に、ヨタは無言でレヴリーを振りかざす。慌てたレヴリーが前言を撤回していた。何事も無かったかのようにまた歩いていく。
一面の靄景色。どれだけ歩いても、靄は晴れないし、全貌が見えない。本当に、自分らは進んでいるのだろうか。少々不安になってくる。
だからだろうか、この静寂を、微妙な空気を打ち破りたくて。ラックはふと、ヨタにこう問いかけていた。


「ヨタのお師匠さんって、どんな人なの?」


その言葉に、久しぶりに、ヨタがこちらを振り返った。




dream-2.6
夢の小路
-My Master is...-



振り返ったその表情は、あんまりいい気分でもなさそうだった。ロンの事を気にしているのか、それとも……


「どんな、と言いますと?」


ヨタが逆に問い返す。それでラックが悩むはめになったのだが。


「んー……、だって、ヨタってすごく、お師匠さんの事大切にしてるみたいだから。どんな人なのか気になっちゃって」


答エになっテないゾ、とレヴリーからツッコミを受ける。ヨタは参ったな、とでも言うかのようにため息をついた。


「大分お話してますし……いいですよ。答えてみせましょう」


ヨタがそう言うと、少しだけ歩みを緩めた。歩きながら話してくれるのだろう。ラックもヨタの隣まで足を進めた。
それを確認したかどうかはわからないが、ヨタはこう切り出す。


「夢の案内人の存在はお話しましたね?」


そうだね、と頷くラック。厳密にはレヴリーから聞いた。それを確認し、ヨタは続ける。


「その……補佐人の事は知ってますか?」
「補佐人? うーん、聞いた事あるよーな……」


すると、あっ、と思い出したように、ラックが手を叩いた。
知っている。かつて出会った時の旅人が、自らの事を補佐人と言っていた。その時は確か、時の守人の補佐に当たるって事だから――


「ロンも補佐人なの? ……ってか、夢にも守人がいるって事?」
「そういう事になります」


そういう会話を、ラルジュとジャン達がしていた事は、知る由もないが。


「案内人は、夢の守人の補佐をしています。本来なら」
『マァでも、ロンの場合は結構自由奔放だナ』


何故かここで、レヴリーが笑う。かつて出会った時の旅人も、守人とはほとんど顔を合わせた事がなかったというし。ラックは思う。


「夢の守人は、この夢世界を管理する者です。どこからも管理しにくい不安定な夢の、歪みを是正して……と言えば聞こえは良いでしょう」


話している内に、ヨタが困ったような目をしている事に気付く。それを見たレヴリーは大笑い。


『アイツはヨタと違って適当だモンな!』
「本当ですよ。少しはこちらの身にもなって欲しいです。……何で僕が捜さなくちゃならないんですか」


何だか相当、不思議な人みたいだ。同じ守人でも、ラルジュとは随分違うんだろうなあ、そう思っていたところで、ラックは何かに気づいた。


「……ん、待って。じゃあその夢の守人ってのが……?」


文脈からいくとそうなる。ヨタは予想通りに、頷いてみせた。


「はい。僕の師匠――夢の守人です」


しかしさらっと重要な事を言ってのけた気がする。


「ええええ!?」


ラック、驚き。戸惑いながらも続ける。


「え、え? じゃあさ、その……ヨタは、守人の弟子ってわけなの?」
「そうなりますね」
『ヨタは次期夢の守人なンだゾ!』


横からレヴリーが補足する。それも驚きなのだが。次期――次の守人になるのがヨタっていう事らしい。ラックは言葉を失ってしまう、というより情報の整理に戸惑っている。


「僕はまだ師匠の弟子です……」


そんな中、レヴリーの言葉に若干消極的な態度をみせるヨタ。しかしそんな微妙な変化は、今のラックにはそこまで気に留める事でもなかった。それまでのインパクトが強すぎる。


「守人の任期は、生きている限り、半永久的です。僕はまだ、師匠から学ばなくちゃいけない事がたくさんありますから」


この辺りで、ようやくラックが落ち着いたようだ。感心したようにヨタに向き直る。


「ほえー……、守人が次期をとるなんて、初めて聞いたよ。ラルジュに弟子なんて、いそうにないし」
「守人が全員次期をとるわけではないようです。というより、夢の守人が特殊なんだと思います」
「えっ、夢の守人だけなの?」


ラックが問いかけ、ヨタが頷く。更に疑問が湧いてきた。


「じゃあなんで、夢だけ? それに、こんなに早々と後継者をとるんだろう……?」


独り言のように呟いたはずが、ヨタには聞こえていたらしい。


「……それは」
『色々あるンダ、気にするナ!』


ヨタがどもり、レヴリーがすかさず遮った。二人の表情は、心無しか、焦燥を浮かべている。深追いするのはよくないと悟り、ラックはそっか、と適当に相づちを打った。しかしまだまだ疑問は底をつかない。


「あれっ、でもさ。ヨタは『向こう』でお師匠さんを捜してるんだよね? ここでお師匠さん捜しても意味ないんじゃ」


あ、とヨタが思わず声を洩らした。少々申し訳なさそうに、彼は答える。


「夢の守人は、夢から出られませんよ。……すみません。師匠を捜しているというのは、半分嘘です。ここのどこかで寝ていると思います。ただ、ここのどこにいるかまでは」


そうしてヨタが首を横に振る。つまりは、ここのどこかにいるって事だ。捜している事に、何ら変わりはない。ラックが黙っていると、ヨタは更に続けてきた。


「僕は現の世界に、とある調査をしに来たんです。師匠に頼まれて。師匠はあちら側へ行く事が出来ませんから……」


僕はまだ守人ではないので、と後に追記。


「調査……?」
『ロンも勘づイてたコトだ。ツマリなー』


首を傾げるラックに、レヴリーが説明を加える。
かいつまんで説明すると要するに、ヨタは師匠――夢の守人から、現の世界の調査を受けていた。夢の案内人であるロンが、異常を感じとっていたからだという。ラックと会った時、ヨタは調査を終えた後だった。後はここに戻るだけだったのだが、そこで夢世界の異常に勘づき、ラックと同行。その先で、おかしくなったロンと遭遇……そして今に至る、というわけらしい。
長い長い説明だったが、何となくわかってきた。ちなみに、その調査の結果は如何なるものだったのか? そう聞くと、ヨタはため息をついた。


「直にわかるでしょう。……そうですね……まずは師匠を捜しだして、報告しなければ」
『ソレに、ロンも何とかシテもらわナイと困ルからナ!』


忘れるなと言いたげに、レヴリーが声を大きくする。一応、目的ははっきりしてきたみたいだ。まずは、ヨタのお師匠さんを捜し出す、と。


「宛てはあるの?」


そのラックの問いかけに、ヨタは目を細めた。……あれ?


「彼は寝る場所を変えますから」


遠回しに、わからないと言われてしまった。仕方ないかな、とラックも了承。


「それとラックさん。もしかしたら、この先また夢負が襲いかかってくるかもしれません」
「ふえ?」


突然話題を変えられ、変な声をあげてしまったラック。ヨタ曰く、推測ではあるが、今の夢世界は不安定になっているらしい。いつ夢負が生成され、襲いかかるかわからないのだと。


「だからラックさん、一層気をつけていきましょう。いざとなったら、僕の『D.L.』がありますが、出来るだけそういう事はないよう避けておきたいです」


でぃ、える? ラックが反復すると、ヨタは懐から短剣を取り出した。さっきヨタが、ロンと対峙した時に持っていたものだ。


「この短剣の名前です。普通の刃物としてももちろん使えますが……本来の用途は違うところにあります」


意味深に、ヨタはD.Lを握りしめる。その様子を眺めていたラック。並んで歩いていたのを、一歩前に出、ヨタをしっかり見据えた。


「だいじょーぶ、心配しないで! 強くはないけど……僕がんばるよ! だって、お師匠さんを見つけて、ロンを助けて、リミットやリシュアも見つけるんだもん!」


彼にはヨタの気持ちが沈んだように見えたのか、ラックは精一杯、大丈夫、と言って笑ってみせる。それに気づいたヨタは、一度目を丸くしてみせると、やがて笑いだした。レヴリーも大爆笑だ。何故二人が笑っているのか、いまいちわからないラックは、あれ? と首を傾げている。


『お前、面白いナ! 中々いねーゾ、コンナ奴!』
「えっ、えっ? 僕変な事言った?」
「いえ。ありがとうございます」


そうして笑うヨタの姿は、ちょっぴり年相応の子どものように思えた。意味までは、ラックには少々理解し難いものがあったのだが。まあ重い雰囲気は拭えたので、良しとしよう。気を取り直して、ラックが頷く。


「よーしっ、気張っていくぞー!」


そうして、勝手に先をずんずん歩いていく。道がわかるのだろうか。そんなはずはないだろう、とヨタは苦笑し、その背を追う。と、レヴリーがぼそぼそ呟いた。


『アイツ、何ダか凄いモン持ってルナ』
「凄いもの?」


ヨタが聞き返す。ラックは大分前方を、楽しそうに歩いている為、気づいていない様子。


『……マァ、ヨタも気付くト思うゾー』
「……」


その返答に、ヨタは沈黙した。全くわからないわけではないからだ。ヨタはラックを見据えた。さすが、こんな状況下で、あんなに楽しそうでいられるだけはある。
多くの面で、自分とラックは違う部分がある、と薄々感じていた。大して年は変わらないだろうに、何がここまで違うのだろう、とヨタは考えて、首を振る。今ここで考えていても無駄だろう。


『……アイツ、まだセカイを知らなインだな、キット』


ひとりごちた、レヴリーの言葉が、ヨタの耳だけに入ってきた。
二人の目には、変わらずラックの背中が映し出されている。が、彼は突然立ち止まる。


「……あれ」


そして、上を見上げた。
次の瞬間、勢いよくこちらへ振り返った。


「あれってムーマ!?」


静かな世界。彼ら以外の声など響かない所。
彼が指差すその先に、紛いもなく、靄の塊が佇んでいた。



――――――――――――


「きっと知らないだけ。あの人と、同じ」


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