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千泡沫庭園

幾つもの泡沫から為る、どこか懐かしい庭園へ。

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ぷろふぃーる

さいしんきじ

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夢の影-2.4 



そこに在るのは寂れた町並み。人の気配はまるでない。
点在する建物は、屋根はおろか、壁までもが所々欠けており、乾いた風が吹き荒ぶ。それらに絡まる、枯れた植物の群。
全てが廃墟と化した中、噴水だけが何とか形を留めていた。その周りには、まだ生きている植物の姿も。ただしその水でさえ、ただ溜まっているので最後のようだ。

そんなはずはない、とマッチは言い張る。が、眼前に広がる光景に、動揺を隠しきれない。
テンが首を傾げながら、おかしいな、と一言。
足元ではタオがその様子を心配そうに窺っている。
そう、ここはどう見ても、荒れ果てたランスターの町並み。




dream-2.4
虚像の街
-Not REAL.-





話は少々遡る。
あれから二人は、東に向かって歩き続けた。
幾分か時間が経ち、遥か向こう、緑の大地に措かれた町を見出だす事が出来た。それを確認すると、マッチは安堵の表情を浮かべた。きっとあれはランスターだろう。漸く見知った場所に戻って来れた、と。
テンもため息をついて、一段落した、と一旦落ち着いた。……が、足元のタオの様子がおかしい。ころころと、テンの周りを忙しなく転がっている。
その事に気付いたテンが、どうしたの? とタオに視線を落とす。するとタオは突然、町の方へ全速力で転がっていった。待ってよ! と思わずマッチが声を荒らげるも、タオの姿は段々小さくなっていく。
仕方ない、とテンが走り出すので、マッチも怪訝ながらも後をついていった。


……と、こうしてタオを追いかけていった結果が、これだ。
遠くから見据えていた町は、廃墟の町。でもその面影は、紛れもなくランスター。
マッチは愕然とし、テンは不思議がる。タオが小さく、にゃーとひと鳴き。


「……何で」


マッチの口から、思わず言葉が漏れる。人は勿論、生物すら見当たらない。一体これは、どういった事態なのか。まさか、あの短時間で町がまるごと、壊滅するはずはない。


「そう。壊滅するはずはないんだよ」


落ち着いた声でテンが呟くと、足元のタオを持ち上げ、抱きかかえた。


「騙されているんだよ。ボクらが」


どういう事?とマッチの問いと、にゃー、と鳴くタオの声が重なった。
その問いには答えず、テンが足を進める。こつん、こつんと足音がやけに響き渡る為、何だか不気味だ。何処へ行く気だろう、とマッチもゆっくりついていく。


いつもは賑やかなあの商店街を、道なりに沿って、二人は歩く。辺りには建物やらの残骸が転がっていた。
見れば見る程、悲しくなっていく。マッチは思わず目を塞いだ。……と、彼は不意にくらりと目眩を覚え、地面に倒れそうになる。慌てて目を開け、体制を整えると、目の前でテンがこちらを振り返り、眺めているのがわかった。テンは何気ない口調でこう言い放つ。


「目を閉じちゃ、背けちゃダメだよ。呑まれちゃうから。……そろそろわかってこないの?」


にゃ、とタオが頷いた。そんな事言われても、とマッチは頭を掻く。


「わかんないよ。何かがおかしい……ってのは感覚からして思うんだけどさ、全然わかんない」


その言葉に、テンはため息をひとつ。タオもにゃぁああ、と欠伸をするのだった。


「本当に"似非"魔術師なの?」
「だからその呼び方はやめて欲しいのさ」


マッチがそう言うものの、テンの目は依然として真剣である。


「……じゃあ、テンはわかったの?」
「確信までには至らないけど。大体予測はついてる」


そう言い、テンは、上の方を指差した。つられてマッチも頭上を見上げるのだが、そこで驚愕とする。そういえば、町並みばかりで、空の方には全然注目していなかった。

空中に、たくさんの瓦礫が静止しているのだ。まるで、糊で貼り固められたように。しかし、まるで今にも、落ちる事を再開しそうな程度に。
さすがのマッチも、これには動揺を隠せない。


「何なのさ、これ……魔法じゃ、ない」


魔力なんて感じられないのに、とマッチが呟く。


「停止。時が止まっているんだよ。……もちろん、ラルジュとかの仕業じゃないと思うけど」


そこでテンが首を捻る。マッチは静かにその様子を見つめ、様子を伺う。


「恐らく、幻なんだと思うよ。しかも、質の悪い……浅層の夢みたいな」


にゃにゃ、と不安そうにタオが鳴く前で、マッチは驚いた表情を浮かべた。


「それはつまり……ここが現実じゃないって事?」
「そうだけど、完全に否定も出来ない。限りなく現実に近い夢の層に、ボクらはいるんだと思う」


テンが言うには、ここは浅い夢の世界だという。限りなく現実に近い夢。先の草原も然ることながら、彼らは夢の中にやってきたらしい。


「夢の中で寝てしまうほど、恐ろしい事はないからね」


テンはそう言う。その理由はわからないのだが、敢えて口を閉ざしておいた。
しかしどうして、こう街が壊滅した夢など見るのだろう、他の皆はどこへ行ったのだろう、等々……わからないことは山程あるのだが。
マッチが唸っていると、テンは一人で歩き出していた。
慌ててマッチが引き留める。


「ちょっと待ってよ! 確認してるんだってば……」
「何を?」


テンが聞くや否や、マッチは軽く詠唱を始め、やがて小さな電磁砲を生み出した。それを先の瓦礫に当ててみる。……びくともしない。
それを見たテンが、思わず言葉を漏らす。


「ね? 止まってるでしょ」


確かに、そういう事らしい。マッチは納得いかないまま、その意見を受け入れる事にした。首を横に振る。


「でも所詮夢なんでしょ? いつか覚めるはずだよ、こんな悪夢、ずっと見てるわけにはいかない」


マッチの言葉に、にゃー、とタオが肯定するように鳴く。


「普通の夢だといいんだけどね」


そう言った途端、テンはタオを抱えたまま駆け出した。ちょっと! と声をあげるも、気づいてない様子。仕方がないので、マッチもやはりその後を追い走り始めた。


そして二人が辿り着いたのは、ランスターの噴水広場。
全てが廃墟と化した中、この噴水だけが何とか形を留めていた。その周りには、まだ生きている植物の姿も。ここは止まっていないのだろうか?
テンが噴水の方をまじまじと見つめる。後ろからマッチが、息を切らしながらやってきた。


「いきなり、どうしたのさ……」
「相変わらず、似非魔術師は体力ないね」


背を向けながら、テンはそう言う。 似非魔術師じゃない、とお決まりのつっこみがテンの背から聞こえたが、それは無視して、噴水の方へ近づいた。
マッチも不機嫌ながら、それに倣う。
二人で、噴水の中を覗き込む。水はまだ残っていた。ただしその水でさえ、ただ溜まっているので最後のようだ。
その水面。そこには、光の反射の要領で、鏡のようにランスターが映っている。が、少々違う。
彼らが知っている、見慣れた光景。いつも通りのランスターの姿が映されているのだった。道を行く買い物客、店前で客引きをしている者、今にも声が聞こえてきそうな活気に溢れている。
これにはマッチはともかく、テンまでもが驚いたようで。おかしいな、と首を傾げる。


「……ここで向こうと繋がってるのかな」
「夢と現実が? 信じられない」
「こうも関連性があるものなんだ……」


それから珍しく感心したように、テンが目をまるくする。向こう側の景色に夢中で、マッチの話などまるで聞こえていないようだ。
仕方がない、とマッチがふとタオを見遣る……タオは耳をぴくぴくさせていた。あれ? マッチが首を捻る。ここでようやく、どうしたの、とテン。


「タオの耳が反応してる」
「え」


マッチの言葉に顔を上げ、またも珍しくテンは、短く声をあげた。即座に、噴水から離れるように、後ろへ跳躍。


「テン!?」
「噴水から離れて!」


テンが叫ぶのと同時に、水飛沫をあげ、噴水から何かが現れた。それは彼らもよく知っている物。


「……鳩?」


マッチがそれを見上げる。ランスターでよく見かける鳩。間違いない。
噴水から現れた鳩は、荒廃したランスターの上空を、ぐるぐると旋回している。まるで何かに狙いをつけているかのよう。
マッチが呆気にとられていると、テンが無言で、虚空から槍を召喚する。
ほぼ同時だった。高い空から、鳩が一気に降下してきたのは。
テンは槍を握りしめ、小さく言い放つ。


「『万・風乱刃』」


すると槍を軸にし、鎌鼬が発生。直進してくる鳩に見事に命中した。鳩はそのまま、霧散するように消えていくのだった。
……そう、動物の身体が霧散するなんて事は、本来あり得ただろうか?
あまりの急展開に、マッチが唖然としていると、テンが警告。


「何してんの。まだまだ来るよ」


その言葉に、慌ててマッチも、懐からペンを取り出す。それをペン回しの要領で一回転させると、マッチの背丈程もある大振りの杖になった。
二人が構えたのを見計らったかのように、激しい水飛沫をあげ、噴水からたくさんの鳩が現れた。その数、軽く百羽程だろうか。
鳩は一斉に上空へ飛び立ち、ランスターの空を埋め尽くした。これだけ集まると圧巻である。
それを見据え、マッチが不服そうに呟く。


「何で鳩が襲ってくるかわかんないけど……もしかしたら、今回の流れに関係あるんじゃないかな」
「それにはボクも同意見だよ」


テンの言葉を皮切りに、集まった鳩が一斉に攻撃を仕掛けてきた!





――鳩といえば、こんなことがあったというのを、忘れていないだろうか。


『まず、現のランスターで鳩の異常を感じ取れた。それに気付いた者がいたかどうかは危ういが……動物は人間よりも、僅かな変化に敏感だ』


見上げながら。


『次に、夢で二人の少女が出会った鳩は、確かにランスターの鳩と似ていた。泥のようなものから、大量に沸き上がる様は、まるで際限を知らないかのよう』


見下ろしながら。


『良からぬ事が起きている。それは重々承知しているだろう。しかし……』


目を閉じ、そして。


『自分は動けない。あれが起動するまで、此処から出られない』


こう呟いた。


『しかし……出来るのなら、そうならない事を願うのみ』


そして、やはり霧散する。





その声に耳を傾けていなくとも、物語は緩やかに進んでいくのだろう。
そう、物語はとっくに始まっている。



――――――――――――


「しかし確実に、悪い方向へ」


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