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千泡沫庭園

幾つもの泡沫から為る、どこか懐かしい庭園へ。

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ぷろふぃーる

さいしんきじ

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その名前の真意を問う話 


そんな問いを、したこともあった。


いつものように、リミットは夢の樹の外、リダ・フライアに腰を下ろしていた。ここから夢の樹までは、そう遠くはない。
風が気持ちいい。リミットは思い切り伸びをした。


――彼が夢の樹にやって来て、しばらく経った。あれから夢の樹には、次々と新たな住人が現れた。その誰もが、何らかの事情を抱えていたのだが、誰も気に止めることはなかった。
リミットは相変わらず、皆に馴染む事は出来なかった。元から、人間と関わる事に抵抗を感じてしまうのだから、無理もない話なのだが。
こういう事はよくある事なのに。思わずため息をついてしまう。
あの場にいると、何か落ち着かない気分になる。何故か?
彼らに深く、関わる気はない。ないはずだ。
そう。ならば早く立ち去ればいいのだ、と。
このまま、何処かへ逃げてしまおうか――


そう思って立ち上がろうとする。と、例の気配を感じた。ああ、またか。リミットは心底、うんざりしてしまう。


「ここまで来て、俺に何の様だ?リシュア」


その人物の方には向かず、ぶっきらぼうに問いかけるリミット。それでもリシュアが、思わず笑みを溢したのがわかった。


「私はただこの辺りをふらりとしていただけですよ」


ばればれな嘘だ。そう口にするも、リシュアは何も言わずに彼の隣に座った。思わずリミットは若干距離を置いてしまう。


「……何だよ」


またも視線は向けることなく、リミットはリシュアに問う。暫くリシュアは何も言わなかった。不思議に思い、ゆっくりと、リミットが彼女に視線を遣る。彼女はただ、空を見上げ、流れていく雲を眺めているのだった。
暫くして、漸くリシュアが口を開いた。


「どうして、リミット、なんですか?」


は?と思わず聞き返してしまった。何が聞きたいのだろう。


「その名前、ですよ。随分と珍しい響きだと思います」


それを聞いて、リミットはリシュアから視線をそらし、少々考え込んでしまった。というのも、他人に話していい内容かどうか、ためらってしまったのだから。
リミットが沈黙していると、リシュアは目を閉じて、こんな事を呟く。


「私が見るからに……あの場は貴方にとって、居心地が悪いんでしょう?」


ぎょっとして、リミットはリシュアを凝視してしまう。彼女はそれに気づいているのか、淡々と続けていく。


「確かに我慢するのはよくありませんが、極端に避けようとするのも問題だと思います」
「おい」


リミットがリシュアに呼び掛ける。すると彼女が目を開け、何でしょうか?と目で問う。


「あの時といい、何で俺の考えてる事がわかるんだよ」


何か気味悪いし、とリミットが吐き捨てる。それでもリシュアはにこにこと表情を崩さない。
再び、沈黙が訪れる。お互い、何も発さず、風の音だけが二人の間を通りすぎていた。
やがて、リミットが体育座りの要領で座り直すと、その膝に顔を埋めた。


「……俺には実の親なんていない」


そのまま、彼は話し出す。


「俺は捨てられたんだと。でも、そんな俺を育ててくれた男がいた。そいつが旅人だった、俺は奴についてった」


あくまで表情は見えない。リシュアは黙って彼の話に耳を傾ける。


「この名前は、その旅人から貰った。「再び会えた、Re,Meet」って意味なんだとさ。どーゆー事かは、今でもさっぱりわかんねーけど」


リミート、それが訛って、リミット。彼は後に付け加えた。


「俺にとっての親は、あいつだけ。旅人の「子」が旅人にならないわけはないだろ」


そう言うリミットは、少しばかり懐かしそうだ。


「そして、俺の師。そーゆーことにしてる。だからさ、俺にとって、あいつが全てだったんだ」


そこまで言うと、今度は急に暗い口調になっていた。リシュアはやはり黙って彼の話を聞く。


「……ある時、騙されたんだ。一人の人間に。詳しくは言えねーけど、でも、それが原因で、奴は殺された」


殺された。その言葉に、リシュアの表情が、若干だが陰る。


「実の親に裏切られ、人間に騙され……もう、信じたくもなくなるだろ」


相変わらず、彼の顔は埋もれたまま。
しかしリシュアは、目線を落とし、首を振っていた。


「……親に突き放される事も、縛り付けられるのと同じように辛いのかもしれない」


そして小さく、そんな事を呟いた。思わずリミットは顔を上げ、リシュアの顔を覗き込もうとする。
そんなリミットに気づいたのか、リシュアはすぐに顔を上げ、どうしました?と取り繕った。
その反応に、リミットは若干不服だったが、それ以上問い詰めることはしなかった。多分リシュアのことだ、聞いたところで適当にはぐらかされるだろう。


「貴方の事情はわかりました。無理はしないで下さいね」


突然、リシュアが立ち上がった。え、とリミットまで立ち上がる。


「失礼しました。先に戻っていますね……リミットも日が暮れる前に、戻ってきて下さい」


そうして、逃げるようにその場を立ち去るリシュア。
何かまずいことでも言ったか……?とリミットは考えるも、これを語って、何ともいえない気持ちになるのは、自分自身だと思い直す。

――まあ、あれで懲りて、向こうも頻繁に近づいて来ないだろう、ならもう問題ない……

そう心に留め、空を見上げた。
しかし。彼にはまだ、引っ掛かることがあった。


――どうして、あんなに素直に、自分の過去を語ってしまったんだか。



自身に問いかけても、今の彼から答えが出るはずがなかった。



――――――


りしゅりみ。
彼の過去を知った時、彼女の心も見え隠れし出す。

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