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千泡沫庭園

幾つもの泡沫から為る、どこか懐かしい庭園へ。

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ぷろふぃーる

さいしんきじ

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蒼穹の果て。微かに響く声。
誰の声?きっと、一人のものではない。


「……空人様。この国は一体、どうなってしまうのでしょうか……?」









――それは、数年程前から既に始まっていた物語。


――――――――――――

【Prologue】


ユノトゥルの遥か上空。雲の上に築かれた、大きな王国がありました。

天上の王国。
スカイルと名を付けられたその国は、遥か古来から、地上とは逸脱とした発展を遂げてきたのです。

ひとつが、その姿。
この国の住民は、皆、背に翼を持っているのです。
二対の翼を持つ者は天使(ルーエル)、一対の翼を持つ者は翼人(フリュー)と呼ばれるようになりました。
天使は神々しいものである故、気がつけば歴代の王様は、全てが「純粋なる血筋」の天使が受け持つようになっていたのです。

ふたつが、科学技術。
雲の上に出来た王国には、雨が降るなんて事はあり得ないはずなのです。水輪から滴る水だけでは、生きていくには到底足りません。
そこで、国民はその知恵を絞りだし、人工的に雲を製造する事に成功したのです。
これは、「天に届く塔」の最上階から生成され、今もこの国の生命を潤しているのです。

みっつが、独特の決まり。
この国は、とある地域を除く地上との全ての交流を絶ちました。
地上人の考えが、この国にとっては不利益をもたらしたのでしょう。
特に天使は、地上人を良く思わず、国外へすらその姿を現す事はありませんでした。
いつしか国では、「天使が地上に堕ちる事は大逆罪」と見なされるようになっていました。
勿論これは、「地上人を最も嫌いな」王様が考案したもので、翼人には適応されず、結構穴がある法ではありました。
それでも大半の国民は、昔からの習わしもあってか、地上人を忌み嫌っていました。

地上とは違う発展を遂げた天上の王国。
王様はもちろん、その家来に市民達等――たくさんの人が住む、賑やかで活気のある国へと成長していきました。


ある時、この国は、とある王様の治世に措かれました。
彼はとても優れた王様で、何十年に一度とない、極めて優秀な天使でした。
多くの頼れる臣下を携え、国を導く。国民はそんな王様に、疑問を抱くことなくついていきました。
しかし、その王様は少し特殊だったのです。
歴代の天使が抱くことが無かった感情――

空の王様は、ある女性に恋かれてしまいました。
この事実が問題なのではありません。相手が問題でした。
その女性は、彼らとは別の種族にして「決して関わってはいけない存在」、地上人だったのです。

ある時、王様は「誤って」国から落ちてしまいました。
その気になれば、飛べたはず。けれどもそんな余裕は、王様にはありませんでした。
そして地上に落ち、翼を痛めてしまいました。
このままでは国に帰ることができない、どうすればいいのだろう。その時、王様は彼女に出会ったのです。


蒼く透き通るような――まるで祖国で見上げた、大空の色をした長い髪。
まるで彼女が、「空そのものだ」とでも体現するかのように。王様は思わず見入ってしまったのです。
次に王様は、地上人である彼女を警戒しました。

しかし彼女は違いました。
彼女はひとりぼっちだった王様に、声をかけてくれました。
彼女はくだらない王様の、話を聞いてくれました。
彼女は頼りのない王様に、優しくしてくれました。
彼女は帰れない王様を、彼女の家に泊まらせてあげました。
彼女はぼろぼろの王様を、看病してくれました。

痛めた翼を癒すように。
彼女は悲しげな王様に、歌を歌いました。
その歌が、王様の脳裏に焼き付くほど、何度も、何度も。旋律はやがて、王様の口からも溢れるようになりました。

長い月日が経ちました。
翼が完治し、王様が国に帰れるようになった時。
彼女は王様に、空の国へ招待されました。
もちろん、彼女にとっては初めての場所でした。
戸惑いながらも、その行為に甘える事にしたのです。

彼女は王様と暫くの間、お城で一緒に過ごしました。
王様にも、変化がありました。
ずっと公職ばかりだった王様も、笑顔を見せる事が多くなったのです。
最初は彼女の事を不快に思っていた臣下達も、王様の様子と彼女のその優しさにより、次第に心を開いていました。

彼女の歌が、国中に響き渡る。
この人なら、王国に迎え入れても構わない。
いつしか彼女は「空人様」と呼ばれるようになっていました。

王様には妃がいました。
しかし王妃様は、一人の赤子を産んで以来、病に倒れ、そのまま目を覚まさなくなってしまったのです。
永遠に眠り続ける病。この国での患者は、王妃様が初めてでした。今も尚、お城のどこかで、ひっそりと眠りについているそうです。……ですが、その事実は王様と一部の臣下のみに知らされており、王子には「母は死んだ」と言い聞かされていました。

その赤子は、無事に成長し、立派な少年になっていました。
既に、頼れる臣下も側につけていました。ただ、その臣下は、あまりにも禍々しく、王子様以外はあまり近づけない雰囲気を纏っていたそうです。
将来はこの王子様が、この国の未来を担う事となるでしょう。

しかしそんな王子様にも、ひとつだけ悩みがありました。
父親が構ってくれない。
王様は常に多忙でした。それ故、中々自分の息子と関わる機会が少なかったのです。その上、母親は死んだと知らされている。
王子様はまだ子供ですから、それが相当寂しいものとなったのでしょう。
それだからこそ、王子様も、空人様を自らの母親と映してしまう程、慕いました。

王様も、王子の寂しさをわかっていました。……いや、もしかしたら、わかっていたつもりだったのかもしれません。
そこで、王様は心に思ったのです。
彼女を……空人様を、自分の新しい妃にしたいと。
王様は彼女を愛していたし、何より、いつ目覚めるかわからない息子の母親を待ち望むより、新しい母親を迎え入れた方がいいと思ったのでしょう。

王様は彼女にそのことを打ち明けようと思いました。
しかし、その旨を伝えると、彼女はどこか悲しそうに、逃げるように、地上へと帰って行きました。

王様は酷く嘆き悲しみました。
そのまま、公職にもつかずに、自室にとじ込もってしまったのです。
これには臣下たちも大騒ぎです。
何とかして、王様を元気付けないと。臣下たちは色々な策を練りました。
が、どれも上手くいかず、段々と城内の活気は衰えていきました。

暫く、そんな日々が続きました。


あくる日、悲しみに沈んだ王様の元に、一人の青年が現れました。その人物は、確かに、王子様の臣下。
彼は王様に、こう告げました。


「後悔するくらいなら、追いかけるべきです……」


そういう彼の瞳は、何かを圧し殺していたようでした。

その言葉に突き動かされ、王様は不意にお城を飛び出しました。
そして王様は、彼女が帰っていった地上へと向かいました。
しかし、地上のどこを探しても、彼女はいませんでした。
暗くじめじめした森、音楽が鳴り響く町、星々が瞬く村を越え、それでも彼女は見つかりませんでした。

お城での生活に慣れていた王様には体力がありませんでした。段々と、疲れてしまい……途方に暮れた王様は、一人の地上人に出会いました。その地上人は、茶色の髪をした青年でした。

王様は彼女の事を地上人に訊きました。
王様は、

剣を突き出されました。
王様は信じられませんでした。
その剣先は自分の身体を貫いていました。
鮮血が、身体を真っ赤に染めました。
王様は、刺されたのです。

王様はこう言いました。


「地上人はやはり我々の敵である」


そして真っ赤に染まった王様は、「地上人によって」殺されました。


彼女に再び、会うことができないまま。
どこか、誤解をしたままで。







――それから何年かの月日が経ち……

その国の玉座には、あの王子様がいました。
王様の唯一の子供が。
しかしその子はまだ、大人ではありません。本当の王様になるには早すぎました。

王様はいません。
王子様は父親の死に疑問を抱いていました。
どうして死んだのか、までは、王子様には知らされていなかったのです。
何しろ、彼自身が見たわけではなく、他の人から聞いたことしかないのですから。
王子様は、色々と調べました。
己の父親が、どうして死んだのか。

様々な人に聞いているうちに、分かってきたことがありました。

王様を殺した、「地上人」の存在。

己の父親は、「忌まわしき」地上人に殺されたらしい。

王子様は、思いました。
地上人のせいで、父親は、殺された。
そう思うことで、王子様は一つの結論に至りました。


「地上人がいなければ、この国はずっと平和でい続けるはず」

「なら、地上人を全て殺せばいい」


王子様の心は、段々と歪んでいきました。



ある時、王子様はこう、命令を下しました。


「全ての地上人を、殲滅しろ」


提示された共通の目的。
活気に欠けていた城内に、別の形で再び勢いが戻ってきたのです。

しかしその時、王子様自身は気づいていませんでした。

己の歪みの原因は――








『スベテハスカイルノヘイワノタメ二』








「……?」


空の様子が怪しくなってきた。
それに気付いたのは、


「どうした。何かまた変なもんでも見えたか?」
「……嫌な予感がします」
「ん、珍しいね。キミがそんなに思い詰めたような顔をするなんて」
「珍しい……ですか?」


――空を守る者。






――――――――――――


これは、天上の王国と「空人様」を巡る、とある王子様の物語。


...sky-cycle
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